社員ブログ
私たちの会社には、日々の業務を支えるためのさまざまな設備が整っています。このブログシリーズでは、代表的な社内設備・機器を6回にわたって一つずつ紹介していきます。第4回目となる今回は、LC-MS(高速液体クロマトグラフ質量分析装置)についてご紹介します。
LC-MSとは
LC-MSは高速液体クロマトグラフ(HPLC)に質量分析計(MS)を検出器として接続した装置です。HPLCにより試料をカラムに通すことで成分ごとに分離します。分離した成分をMSで検出することにより、どのような成分(定性分析)がどの程度(定量分析)試料中に含まれているか調べることができます。
第1回目にご紹介したGC-MSと類似した装置であり、GC-MSは試料をガス化して分離・検出するのに対し、LC-MSは液体に溶かした状態で分離・検出するため、より高分子量・高極性成分の分析に適しています。

MSについて
LC-MSはGC-MSと類似した装置であるため、ネオス社内での活用方法についてもGC-MSと概ね同様になります。そこで本稿ではMS(質量分析計)について、もう少し詳しくお話ししようと思います。
LC、GC共にMS以外の検出器も存在していますが、MS以外の検出器だと情報量が少なく、ほとんどの場合ピークの有無でしか成分を判別できません。一方MSでは質量情報も得られるため、どのような成分が含まれているかの分析(定性分析)に対し特に威力を発揮します。実はネオス社内の分析業務においては、第1回目にご紹介した原料中の不純物分析や、お客様先にて機械油や添加剤が混入した液の分析等『どのような成分が入っているか分からない試料』を分析することが意外に多く、上記特徴を有するMSの存在は不可欠となっています。以下にMSが活躍する場面の具体例をご紹介します。
活躍例①・・・重なったピークの分離
クロマトグラフィーで分析した結果、異なる成分に由来するピークが重なってしまうことがしばしばありますが、MS以外の検出器ではほとんどの場合、それぞれの成分毎に分離することができず、分離条件の検討等が必要になります。それでもある程度分離していれば、複数の成分を含んでいるということは分かるのですが、ピークが完全に重なってしまった場合、含有しているはずの成分が見落とされてしまう恐れがあります。一方MSで検出を行った場合、重なったピークのマススペクトル(質量情報を数値化して図にしたもの)を確認することで複数成分が存在していることが分かり、それぞれの成分毎に分離してクロマトグラムを出力することもできます。
このような特徴によりLC-MSでは試料中に含まれている成分を精度よく検出することができ、分離したクロマトグラムのピークの大きさから、各成分がどの程度含まれているか分析することも可能です。

活躍例②・・・構造解析
MSの最大のメリットは何といっても質量情報≒分子量情報が得られることです。試料中に含まれる未知成分の分子量が分かれば構造解析の大きな手掛かりになります。特徴的な分子量を有する成分においては、マススペクトルのみである程度の構造を推定することも可能です。例えば非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルはマススペクトルにおいて44刻みの数値を示すことが知られており、44刻みのマススペクトルが得られた時点で非イオン系界面活性剤を含んでいることが分かります。またネオスでは保有していませんがTOF-MS(飛行時間型質量分析装置)のような高分解能のMSで測定すれば、アルキル基やポリオキシエチレン鎖の長さも推定することができます。

まとめ
実際の構造解析においては、LC-MSやGC-MS以外にNMRやFT-IR等の他の分析機器による分析結果と合わせて複合的に解析を行うことが多いですが、質量情報が得られるか否かで構造解析の成功率や解析時間は大きく変わります。そのため、LC-MSはGC-MSと共に研究所の基盤技術である分析技術を支えている装置の一つであると言えます。
次回以降もネオスが保有する代表的な設備・機器について紹介していきますので、是非ご覧になってください。
以上